治療
生活指導等の一般的な治療
うつ病相期
@患者への説明
まず、重要なことは、うつ病という病気であることの確認と、うつ病という病気がありふれたものであるということ、治療で苦痛が取り除ける可能性が高いことに言及することです。
そして、もっとも重要な点は十分な休養であり、それができなければ、入院治療を勧めます。ただし、患者の多くは、もともとまじめで責任感が強い人が多いので、「仕事を休むなんてできない」、「自分が仕事を休んだりしたら、ほかの人に迷惑がかかる」と休養することをためらったり、拒んだりすることがよくあります。
そこで、患者に対して、うつ病の治療には休養がいかに重要かを十分に説明しなければなりません。
さらに、制止などによって、仕事や日常生活は停滞しているので、患者の前には決断すべき問題が出ます。また、自己評価の異常な低下により、退職したいなどといった考えが生まれてきます。しかし、その決断は気分が改善するまで待つように指示します。病気により、正常な判断ができなくなっているからです。
また、患者は自ら口にしなくとも、常に死について思いを巡らせています。そこで、自殺しないという約束を求めます。患者の自殺を促す危険性があると思われるかもしれませんが、経験的には、大丈夫だそうです。
また、持続的服薬の必要性と生じうる副作用を理解させることなども重要です。
A家族への説明
行ってはいけないことは、患者を励ましてはいけないということがあります。うつ病は頑張らなければいけないと患者が感じているのに、頑張ることができない病気であり、それに患者は苦痛を感じています。それを周囲から言われれば、ますます自分の能力低下を自覚し、自殺する危険性があります。また、患者の家族は、患者に対して、気晴らしを考え、患者を旅行などに連れ出します。しかし、患者は、周囲の人々と溶け合って楽しむことができません。だから、気晴らしは不要です。
家族がなすべきことは、ただ受身の姿勢で患者の軽快を待つことです。
薬物療法
分類 | 一般名(商品名) | ||
抗うつ薬 | 第一世代 | 三環系 | イミプラニン(イミドール、トフラニール)・・・気分改善効果が強い、パニック障害にも |
クロミプラミン(アナフラニール)・・・気分改善効果が強い にきびのための局所亜鉛 | |||
アミトリプチン(トリプタノール、ラントロン)・・・不安解消作用が強い、特に焦燥感の強いうつ病に | |||
ノルトリプチリン(ノリトレン) | |||
トリミプラニン(スルモンチール) | |||
第二世代 | 三環系 | アモキサピン(アモキサン)・・・三環系にしては副作用が少ない、幻覚・妄想を伴う特殊なうつ病に | |
ドスレピン (プロチアデン) | |||
ロフェプラミン (アンプリット) | |||
四環系 | マプロチリン(ルジオミール)・・・気分改善効果が強い | ||
ミアンセリン(テトラミド)・・・不安解消作用が強い | |||
セチプチリン(テシプール)・・・気分改善効果が強い | |||
二環系 | トラゾドン(レスリン、デジレル) | ||
第三世代 | SSRI | フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、 | |
パロキセチン(パキシル) | |||
セルトラリン(ジェイゾロフト) | |||
第4世代 | SNRI | ミルナシプラン(トレドミン) | |
その他 | スルピリド(ドグマチール、アビリット、ミラドール)・・・意欲亢進作用 | ||
気分安定薬 | 炭酸リチウム(リーマス) | ||
バルプロ酸ナトリウム(デパケン、バレリン)、 | |||
カルバマゼピン(テグレトール、テレスミン)、 EMEAアトピー性皮膚炎 |
うつ病性障害(うつ病)の場合:薬物選択の基準としては、患者自身あるいは家族がある薬物によく反応すれば、その薬物が第一選択となります。そのような事実がなければ、副作用に基づいて選択されます。
過量服薬時の致死性は、三環系・四環系の方がSSRIよりも高いです。また一般に三環系・四環系よりもSSRI、SNRIの方が副作用が軽いと言われています。そのため、今ではSSRIがうつ病に対して、もっともよくつかわれる薬となっています。
3環系・四環系抗うつ薬の副作用
末梢性抗コリン作用・・・口渇・便秘・麻痺性イレウス・排尿困難・目の調節障害・動悸・緑内障の増悪、頻脈など
中枢性抗コリン作用(特に高齢者)・・・せん妄・幻視・幻聴・失見当識・健忘・精神運動興奮・思考散乱
*抗コリン作用は三環系と比べると四環系抗うつ薬では低く、SSRI、SNRIではさらに低い。
αアドレナリン受容体遮断・・・起立性低血圧・心伝導障害
H1受容体遮断・・・眠気
緑内障と前立腺肥大症には禁忌
アモキサピンで特にみられる副作用
抗ドーパミン作用・・・悪性症候群、遅発性ジスキネジアなど
マプロチリン、イミプラミン、クロミプラミンで特にみられる副作用
けいれん発作
SSRIの副作用
消化器症状(嘔吐など)・・・服用初期の一過性症状が多い
アクチベーション(賦活)症候群(不安・焦燥・パニック発作・不眠・易刺激性・敵意・衝動性・アカシジア・躁状態)・・・服用初期あるいは増量時に多い
離脱症候群(めまい・悪心・嘔吐・疲労倦怠感・頭痛・不安定な歩行・不眠・電気ショック様感覚・知覚障害・視覚障害・下痢)・・・突然の服用中断で起こりやすい。服薬をやめる場合には慎重に漸減する。
セロトニン症候群・・・せん妄・高熱症・反射亢進・ミオクローヌスを主症状とし、時に致死的な経過をたどる。
抗うつ薬の効果を感じるまでに3〜4週間かかります。抗うつ薬治療は、少なくとも6ヶ月間、または以前の病相の期間のどちらか長いほうの期間は継続すべきと言われています。抗うつ薬による予防的治療が再発の頻度と重症度を軽減させるのに効果的であるという研究があります。抗うつ薬を中止する場合には、個々の半減期に従い、1〜2週間かけて徐徐に減量すべきです。
双極性障害(躁うつ病)の場合:うつ病相の治療は、普通のうつ病性障害と異なり、抗うつ薬による躁転に注意しなければなりません。通常、軽症の場合はリチウムだけで治療を開始します。抗うつ作用が6〜8週見られない場合や中等症の場合はSSRIとリチウムを併用します。躁病相期の治療はリチウムを中心とします。
躁病エピソードを2回繰り返すか、重症な躁病エピソードの場合、長期的なリチウムの治療を考慮します。リチウムが利用できないときや、リチウムだけでは効果が不十分なときには、カルバマゼピンやバルプロ酸などを用います。
リチウムの副作用
1.6mEq〜及び投与開始直後:悪心・食欲不振・腹部不快感・振戦・続発性腎性尿崩症(多尿)
2.0mEq〜:運動失調・せん妄・眼振・痙攣・死にいたる
リチウムは、抗精神病薬のように無理やり押さえつけた鎮静ではなく、自然に気分が穏やかになっていくという特徴があります、使用に際しては、血中濃度のこまめな測定が必要です。
皮膚炎の治療法
電気けいれん療法(ECT)
@患者が薬物療法に反応しないとき(難治性うつ病)A薬物療法の危険性がECTの危険性を上回る場合(身体衰弱状態・妊婦など)B迅速な臨床症状の改善が必要とされる場合(自殺の危険、低栄養状態など薬物療法では間に合わない場合)には適応となります。
心血管系に大きな負担がかかるため、新鮮な虚血性心疾患や脳梗塞、コントロールの難しい心臓弁膜症、破裂の恐れのある脳動脈瘤を抱えた患者には避けた方が無難です。
副作用として、前向健忘や一過性の頭痛、疲労感があります。
認知療法
患者に存在している否定的な認知を改め、以前とは違った柔軟で肯定的な考え方を身につけることで、うつ病の軽減と再発の防止を行う療法です。大うつ病性障害の治療に有効であるとする複数の研究報告があります。
対人関係療法
現在の対人関係の問題は、早期の対人関係の不全に由来しているということと、現在抱えている対人関係の問題が、現在の抑うつ症状を生じさせ、長引かせているということの二つの仮説に基づいて行われる療法です。重症の大うつ病に対する対人関係療法の治療効果について確かな資料はありませんが、精神療法以外に治療の選択肢がない場合、対人関係療法は重症の大うつ病にたいする最も有効な治療法であるかもしれません。
行動療法
不適切な行動様式のために、社会から拒否されたりして、現在の抑うつ症状を生じさせたという仮説に基づき、不適切な行動を取扱い、社会に適応していくことを学ぶ療法です。これまでの研究から行動療法が大うつ病性障害の1つの有効な治療法であることが示されています。
精神分析的療法
患者の人格構造や性格に変化を与えることにより、症状を軽減させる療法ですが、治療の経過中、患者は強い不安と苦痛をしばしば経験します。
家族療法
気分障害が患者の結婚や家族の機能を危うくしている場合、または家族状況によって気分障害が憎悪したり、遷延したりしている場合に適応されます。
うつ病治療における精神療法と薬物療法の適応
治療の適応 | |
薬物療法 | 精神療法 |
極度な抑うつ気分 著しい体重減少 早朝覚醒 急性、挿話性、制御困難な自殺企図 パニック発作、恐怖、被害妄想、偽痴呆、身体症状 遺伝的負荷 統合失調症、アルコール依存、神経性無食欲症などほかの精神疾患 境界性、演技性、強迫性人格障害 | 軽度から中等度あるいは性格に依存した抑うつ気分 若干の体重増加 過眠、悪夢 慢性の絶望感や無力感 社会的引きこもり、拒絶や失敗に対する恐れ、心気症的訴え 遺伝的負荷がない 心理社会的葛藤因子 依存性、未熟性、被虐性人格障害 |
うつ病の精神療法に適している患者
選択が適している患者 | ||
精神力動的療法 | 認知療法 | 対人関係療法 |
長期にわたる虚無感と自己の過小評価 小児期における喪失や長期間の引き離し 過去の対人関係における葛藤 内観する能力 退行できる可能性 夢や空想への接近 指示や指導をほとんど必要としない 安定した環境 | 自己、世界、将来に対する明にゆがんだ思考 実践的思考反応が乏しい場合を含み、他の精神療法では客観的に見て不十分である音 指示や指導を中等度から高度必要としている 行動訓練や自己救済に対する反応の良さ | 最近の焦点トなっている配偶者や重要な他者との論争 社会的、あるいは意思疎通の問題 最近の役割の変化、あるいは人生の変化 異常な悲嘆反応 指示や指導を若干から中等度必要としている |
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